(趣旨)
日本をはじめ多くの国のofficial modern medicine(正規医療)はいわゆる「西洋医学」です。歴史的には各地で発展してきた固有のtraditional medicine(伝統医療)がありましたが、西洋医学も古代ギリシア医学を源流とし、近代科学を取入れ進化・発展してきた歴史があります。特に感染症に対する成果がofficial modern medicineとしての地位を確たるものとしてきたといわれています。
traditional medicineにはアーユルヴェーダ(インド大陸で発展)、ユナニ医学(ギリシャ・アラビア医学)や中国医学のように明確な体系をもつものから、folk medicine(民間療法:非体系的・経験的)まで様々な形態の医学が含まれます。それぞれ固有の診断法、予防法、治療法がありますが、自然治癒力を促進・活用する点にその共通点があります。
高齢化時代の課題のひとつとして、病気ではないが体調が優れない状況や足腰などの体の痛みへの対処があります。多くが加齢や筋力の低下に伴うものですので、official modern medicineだけでは十分には対応できていないのが実状ではないでしょうか。不定愁訴とか自律神経の乱れ等、病気ではないがあたかも病気のように扱われ、冗長的に薬剤を処方される状況が少なくありません。
我国では既に人口の1/4以上が高齢者(65歳以上)となり、2025年には人口の3割以上が後期高齢者(75歳以上)となりますが、健康年齢(を過ぎてから亡くなるまでの期間は男性:9年強、女性:12年強)を延伸させることが、個人にとっても財政にとっても優しいことに繋がる状況にあります。
高齢化の進展過程において、official modern medicineはあくまでも病症に対する対処療法で、治癒力を最大化させる取組ではないことに気がついた人は少なくないようです。日本では既に忘れ去られた(または忘れかけられている)traditional medicineを参照しながら、より科学的で実践的な取組が必要と考え本研究会の発足に至りました。
本研究会では、北海道大学の付属登別分院で、長年内科医と研究者として活動され、また、世界的温泉気候物理医学研究者として活動されてきた阿岸祐幸氏(故人/医療事業再生機構元理事)が座長を務め、自然要素(海、山岳、森林、地形、温泉、気候など)のもつ保健作用とその社会的実装(提供)法を究明することを目的とします。保健とは心身の健康の維持・強化から不調の改善、病の治癒に至るまでを指し、科学的且つ実践的なアプローチを基本とします。
医学、生物学、物理学はもとより、自然要素を効果的・効率的に活用するプログラムやインフラに至る分野を対象とし、さらにそれらを継続的、安定的、経済的に社会に実装(提供)するシステムや経営に関連する分野や観光分野なども含まれます。因って、自然要素の保健作用を活用する際に関連する分野を包括する学際的分野であると考えます。
尚、本研究を推進することで、高齢社会先進国として社会や世界に対して、下記のような影響を及ぼすものと期待します。また、健康は自らが行動し維持するものと、健康パラダイムを転換させることを目指します。
記
自然要素の持つ保健作用の解明
自然要素活用プログラムの策定
自然要素活用インフラの整備・普及
自然環境の保全
健康年齢の延伸
国民医療費の低減(特に高齢者医療費や介護関連費用)
地域振興
観光業の活性化
活力ある高齢社会の醸成
以上